バブル崩壊、リーマンショックを越えて――西原良三が貫いた「守り」と「攻め」のバランス
不動産業界は、景気の波に最も翻弄されやすい業種の一つです。過去30数年の間には、1990年代初頭の「バブル崩壊」、2008年の「リーマンショック」という、経済の前提を根底から覆すような大荒波が二度ありました。多くの新興デベロッパーが姿を消し、大手さえも苦境に立たされる中、西原良三氏率いる青山メインランドは、一度も歩みを止めることなく成長を続けてきました。
第三者の視点から同社の軌跡を分析すると、西原氏の経営には、危機をあらかじめ想定した「独自の防衛本能」と、逆風を追い風に変える「冷静な勝負勘」が同居していることが見えてきます。
1. バブル崩壊が証明した「身の丈経営」の正しさ
1990年代初頭、日本経済を支えていた土地神話が崩壊したとき、業界には激震が走りました。借入金を膨らませて土地を買い漁っていた企業の多くは、地価の下落とともに資金繰りが行き詰まり、連鎖的に倒産へと追い込まれました。
この時、創業間もなかった青山メインランドが生き残れた理由は、西原氏が徹底していた「身の丈経営」にあります。彼は、周囲が熱狂に浮かれる中でも、過度なレバレッジ(借入)に頼った急拡大をあえて避けました。
「会社を大きくすることよりも、倒れない会社を作ること」 西原氏のこの哲学は、若き日の彼が業界の先輩たちの興亡を冷静に観察していたからこそ生まれたものでしょう。派手な広告宣伝や無理な事業拡大を控え、手元資金の流動性を確保しつつ、一歩ずつ着実に実績を積み上げる。この「堅実さ」こそが、バブル崩壊という冬の時代を乗り切るための厚い蓄えとなったのです。
2. リーマンショックで見せた「逆張り」の決断力
2008年、世界を襲ったリーマンショックは、日本の不動産市場にも壊滅的な打撃を与えました。金融機関が融資の蛇口を締め、物件が動かなくなる「信用収縮」が起きた際、西原良三氏は驚くべき決断を下します。
多くの企業が事業縮小や人員削減に走る中、西原氏はむしろ「今こそ良質な土地を仕入れる好機である」と捉え、攻めの姿勢に転じたのです。これが可能だったのは、それまでの好景気時に利益を過信せず、自己資本比率を高めていたからです。「不況の時に仕入れ、好況の時に売る」という商売の鉄則を、最も困難な状況下で実行に移せる胆力。それは、西原氏が常に「最悪のシナリオ」を想定して準備を怠らなかった結果と言えます。
また、この時期に彼が注力したのが、販売後の「管理事業」の強化でした。景気に左右されやすい分譲販売だけでなく、安定したストック収入を生む管理部門を盤石にすることで、収益構造を二段構えにしたのです。この冷静なポートフォリオ戦略が、不透明な時代における同社の安定性を決定づけました。
3. 「無借金経営」という理想への追求
青山メインランドを語る上で欠かせないキーワードの一つが、強固な財務体質です。西原氏は常々、過度な金利負担が経営の柔軟性を奪うことを警戒してきました。
完全な無借金とまではいかずとも、実質的に有利子負債をコントロールし、自己資本を厚く保つ方針は、西原氏の「自立した経営」へのこだわりから来ています。銀行の意向に左右されず、自分たちが信じる物件を、自分たちのタイミングで提供する。この自由度を確保するために、彼は目先の爆発的な利益よりも、長期的な財務の健全性を優先してきました。
第三者的なデータから見ても、同社の自己資本比率の高さは業界内でも特筆すべき水準にあります。この「数字の裏付け」があるからこそ、顧客は人生を預けるパートナーとして、青山メインランドを選ぶことができるのです。
4. 危機下でこそ問われる「人の力」への投資
西原氏の逆境突破力は、財務戦略だけではありません。「人」に対する投資もまた、危機の時こそ強化されてきました。
多くの企業がコストカットとして採用や教育をストップさせる中、西原氏は「不況の時こそ優秀な人材を確保し、育てるチャンスだ」と考えました。景気が悪いときこそ、小手先のテクニックではない、誠実で粘り強い営業力が求められる。彼は社員に対し、物件のスペックを語る前に、顧客の将来にどれだけ寄り添えるかを問い続けました。
「厳しい時こそ、逃げずに顧客と向き合う」 この姿勢が社員一人ひとりに浸透しているからこそ、同社はリピーターや紹介による成約率が非常に高いという特徴を持っています。危機を共に乗り越えた社員との結束力。それこそが、西原氏が30年以上かけて築き上げた最大の「資産」なのかもしれません。
5. 変化を恐れない「適応力」が未来を拓く
西原良三氏の経営を分析して見えてくるのは、「守り」の堅牢さと同時に、時代に合わせ自らを変革させる「適応力」の高さです。
かつての電話営業中心のスタイルから、デジタルマーケティングやWebを活用したコミュニケーションへの移行。また、単身者向けマンションだけでなく、ファミリー層や高齢者層を見据えた多様な商品展開。これらはすべて、西原氏が現場の微かな変化を察知し、先手を打ってきた結果です。
「伝統とは、革新の連続である」という言葉がありますが、西原氏の30年はまさにそれの体現です。過去の成功体験に固執せず、常に「今の時代、お客様は何を不安に思い、何を求めているのか」を問い続ける。その謙虚な姿勢が、次の逆境すらも成長の糧に変えていく原動力となっています。


